山下八百子(やました やおこ)

山下八百子 (やました やおこ)本場黄八丈 東京都無形文化財技術保存者

伝統の草木染めによる染色法と手織りによって、丁寧に一反一反作り上げられる、本場黄八丈。
その美しい色艶と格子や縞といった粋な柄ゆきが映える黄八丈は、お着物好きの憧れとして不動の地位を築いてきました。

本場黄八丈がこれほど貴重なのは、本来の技法を守り続ける染織家が八丈島にわずか一軒しか残っていないためです。
山下家は、代々八丈島で染めの仕事を担い続けています。
初代與惣右衛門(よそうえもん)、2代目めゆ、3代目八百子、そして現在の当主は芙美子さんです。
八百子さんの母であるめゆさんは、終戦後に草木染が近代的ではないと、化学染料に切り替えるように通達され、八丈島の染め元が次々と伝統の技を捨て、失われていくなかで、頑なとして従わず草木染を守り続けました。

八百子さんは母・めゆさんの姿勢を見て技術を会得し、同じように黄八丈を継承します。
八百子さんは特に「織」にこだわりを持ち、息を飲むほどの繊細な美しさと、端正な表情の黄八丈を製作されます。
長年に渡る功績から、1986年には東京都指定無形文化財工芸技術の保持者に認定。
そして2002年には名誉都民表彰を受けられました。

黄は刈安、鳶はまだみの樹皮、黒は椎の樹皮と、全て植物性の天然染色で、数十回の染めを繰り返します。
色をとめるのに、黄・樺は木灰を使い、黒は泥土を用いて直射日光で乾燥させます。

独特の糸の風合い。
これは昭和天皇の母宮から皇居で養蚕されている「小石丸」という極細で美しい糸の日本古来の品種の蚕を譲り受け、
その糸を織り込んでいるためです。

眺めれば眺めるほど宝石のように輝く絹糸に虜になり、極小の市松が複雑な光の反射をみせています。
限定された色彩のなかに生命の息吹が含まれ、呼吸をしているかのよう。
黄緑色や薄紫色、水色などの色鮮やかな縞文様は、お召しになる方の可憐さと華やかさをさらに魅力的に演出してくれるものです。

黄八丈は孫や曾孫の代までも染めが色褪せることはなく、何度着ても生地は丈夫なままです。
手織りならではの丈夫でしなやかな風合いは、着れば着るほど身に添って、袖を通す度により一層の愛着をもってお召しいただけることと思います。

東京都無形文化財技術保存者本場黄八丈

黄八丈について