【西陣織】龍村美術織物(たつむらびじゅつおりもの)
「美術織物という言葉を世に浸透させた」この言葉ほど、龍村美術織物(たつむらびじゅつおりもの)の歴史と品質を物語るにふさわしい賞賛はないです。
初代龍村平藏が残した技法は現代へ余すことなく受け継がれ、さまざまな製品を形づくる要素として今なお息づいています。時を経て今なお光彩を放つ龍村美術織物の魅力が感じられます。
龍村美術織物製の織物作品
こちらではヤマトクで買取した、龍村美術織物製の織物作品をいくつかご紹介いたします。
紅牙瑞錦(こうげずいきん)
こちらは龍村美術織物の作品の中でもとくに人気の高い紅牙瑞錦 (こうげずいきん)です。
曲尺一尺に相当する象牙の尺で、象牙を赤く染め、あおれにはね彫りして文様を出し、更に黄や緑の色をさして多彩にしていきます。
鳥獣文や草花文などを表し、裏は当時の流行文を表しています。 それらの文様を情緒ある配色をくわえて、経錦の織法の上に再現しています。
全体から醸し出されるエレガントな佇まい。 芸術と呼ぶにふさわしい、大変見事な仕上りでございます。
遠州緞子
遠州緞子と呼ばれるこの文様は、利休、織部、石州を経て天下の宗匠となった小堀遠州が愛好していたとされており、洗練された遠州の美的感覚が伺えます。
図案化された菊、椿、牡丹花が石畳文様の中に整然と配列された文様構成を生かし、彩りに創意を加えて織り成したものです。
利休緞子
こちらの作品には利休居士が自らの裂として選んだ梅花文の緞子が織り込まれております。
梅花がドット柄にも見え、洗練された造形美は身に着ける人を華やかにする魅力があります。
花文暈繝錦
正倉院に伝えられている暈繝(うんげん)錦。それは同系色の濃淡の変化を暈し手法ではなく、段階的に区分を作って表現するものです。
こちらの原品は花樹双鳳双羊文様白綾溽の縁裂に用いられている緯錦です。
「暈繝」とは、同色系統の濃淡を断層的に表し、さらにそれと対比的な他の色調の濃淡と組み合わせることにより、立体感や装飾的効果をもたせる色彩法で、この裂の場合、紫、赤、黄色で美しく縦縞をあらわしていて、それぞれの縞の上に、四弁の花と、六弁の花を規則正しく並べています。
均整のとれた見事な構図の中に小花がカラフルな色彩で散りばめられています。
天平双華文
正倉院御物裂のなかで双華文錦と称されるこの作品は四房の花の菱形と八弁の花等を巧みに組み合わせた品格の非常に高い経錦です。
六弁花文の縦縞部と菱形花文の縦縞部とが交互に繰り返されているこの文様は、正倉院宝物・楽舞装束らしい半臂の遺品に見ることができる織物です。
この時代の織物の特徴として、四房の菱には緑色から中央にむかって青色へと。
そして八房の菱にはオレンジ色から赤色へと縞ごとに色合いを深めることでグラデーションのように変化させています。
獅噛文長斑錦
獅噛文長斑錦は赤や、緑、縹、紫で縦縞を経錦で織り出し、その上に、大きく口を開き歯牙をあらわしたように見える獅子の頭を並べた「獅噛文」を横一列に何段も配した図柄です。名称にある「長斑」とは、このように、数色の色の縦縞をあらわした織物をいいます。
龍村では、1922年より正倉院御物裂の復元を委嘱されていましたが、1928年に一通りの成果をあげています。この獅噛文長斑錦も、その一つに含まれます。
奈良時代の錦裂の仲でも文様系統を異にする錦で、獅子が口を開いた如くにみえるため獅噛の名称がつけられました。この裂は三本の経糸・三重経で織り出されている経錦です。
獣の顔のような、不思議な獅子の顔に使われている色は三色になります。
しかし、四色に区分けされた縞模様の上に置かれた獅噛文を見ると、とても色鮮やかです。それは四色縞との相乗効果により、多彩な色の模様として見せかけているためです。
円文白虎朱雀錦
ササン朝ペルシャ式の円文に囲まれた白色の動物は、四神文の一つである白虎で、赤い鳥は同じく四神文の一つの朱雀です。
白虎は西方の守護神で、朱雀は南方の守護神であると中国古代では信じられていました。
原品は法隆寺伝来の錦で飛鳥時代の作品であり、周囲の唐草も当時の典型的な文様といえます。
「円文白虎朱雀錦」と名づけられたこちらの帯は、正倉院の宝物庫の壁画をモチーフにして織り上げられた一本です。
深い臙脂色の地一面に織り上げられた白虎と朱雀の円文の意匠。
直径約10cmの大きな円文が和の装いにインパクトを与え、富貴な佇まいをもたらします。
シンプルで洒落味にあふれた面持飽きのこない、味わいある帯姿を演出してくれます。
七曜太子
淡い珊瑚朱色地には柔らかな黄緑・水色・紫色などをのびのびと織りなして、美しい七曜文様が生まれています。
七曜とは火水木金土星、太陽、月を合わせた7つの天体を意味します。
七曜太子は法隆寺に伝来する絣錦のひとつで、文様は七つの星をかたどり、技法は1本の経糸を5色に染め分けています。
飛鳥時代にインドの文化が日本に伝来したものと考えられます。
獅子狩文
獅子狩文はササン朝ペルシャ(226~651)で大流行したデザインです。
ササン朝ペルシアの国王は、ゾロアスター教の最高神アフラ・マズダーによって、地上に遣わされた支配者であると考えられていました。
また獅子は百獣の王であり、もし神の意志があるならばこれを射止められるが、神の意志のない場合は逆に噛み殺されると信じられていました。
そこでペルシアの王たちは、自分が神に遣わされた地上の支配者であることを示すために、獅子を狩り、射止めなければならなかったのです。
国王たちがこの獅子を射る自らの姿を金銀の器や織物に描かせたことが、この文様の起源といわれています。
鴛鴦唐草文錦
鴛鴦唐草文は、中国・六朝時代の意匠にしばしば見られるもので、鴛鴦は昔より夫婦相愛を象徴しております。
我が国では、正倉院宝物の中に多種多様な形で鴛鴦文が見られ、中でもこの錦に見る鴛鴦は華麗でしかも格調の高さが注目されるものです。
角倉金襴
角倉金襴は名物裂の一つで豊臣秀吉の時代に雄飛した角倉了以が所持していた金襴です。
ピンと耳をたてた兎と花の木で表現されています。
花麒麟金襴
花麒麟紋は花をくわえた鹿のような動物が土坡の上にうずくまった文様で、これを横一列ごとに左向き、右向きに配しています。
花兎金襴と同系列の文様で、本歌は中国明代のものと思われます。
花鳥梅花文錦
正倉院御物文 花鳥梅花文錦は六弁の唐花に瓔珞(宝石などを連ねて編み、仏像の頭・首・胸などにかけた飾り)が響き、かすかに小鳥が囀りこれに和す趣を文様とした物であり、高雅な天平の着想は人を夢殿の昔に遊ばしめる感があります。
その組織は漢以来伝統し来つた経糸の錦であり、風雅と堅牢とを兼ね備えた織風です。
この裂は先年来の研究を一転し、古法古趣を厳守しつつ新たに応用し、現代化したものです。
西域猪頭文錦
西域猪頭文錦と銘打たれた濃赤色地に紫色の調和が美しい経錦の作品です。
大きな牙と鬣、そして力強い眼力のワイルドな猪の表情はまさに野性味溢れんばかりです。
トルファン近郊から発見された絹織物に着想を得たもので、龍村平蔵から脈々と受け継がれる温故知新を知るという姿勢が見て取れます。今にも遠吠えをしそうですね。
赤地格子連花文錦
法隆寺伝来の法隆寺裂の中では太子間道や獅子狩猟文錦、そしてこの蜀江錦などがあり、これは蜀紅錦の原型となるものです。
赤色地に伝統の色糸を用いて当時の姿のままに織りだしています。
規則正しさと伸びやかさを兼ね備えた佇まいは和の装いにインパクトを与え、富貴な佇まいをもたらします。
チャンカイの申
高度な技術を要する経錦にて織りだされたのは「チャンカイの申」。先インカの染織は、実に多様な技法を開発し、華麗さと渋さを併せ持つ感覚の幅を示します。
色彩豊かな文様は写実的なものから、いくつかの要素に分解し、組み合わせることで最後にパターン化してしまうほどに千変万化された大胆な抽象力と、ユーモラスな人間味溢れるものです。
この文様はペルー国の首都リマより北方海岸約80キロメートルにあるチャンカイ川流域を中心として、先インカ文明の最後の地方文化として栄えたチャンカイ文化の染織文様である。猿と幾何学文様を組み合わせて集約したもので、異彩を放ちます。
鮮やかな色糸使いにてクルンと尻尾を丸めて、二頭が仲良く手を繋ぐ猿があしらわれています。
ニコッと笑顔の顔をこちらに向けるというなんとも愛らしいデザインです。